『INDUST』2021年12月号 No.410

産廃処理業界の人材定着に向けて

 AIによる自動化などにより、産業廃棄物処理業、資源循環業は今後省力化が図られていくことが予想されている。しかし、自動化が定着するまでは時間がかかり現場作業は人材が必要だ。また、営業部門は対面による顔の見える折衝が必要であり、排出事業者に信頼や安心、安全をアピールするためには優秀な人材を確保し、定着させていくことが不可欠だ。12月号では新卒、中途採用の人材確保や育成に向けた各業者の取組みを紹介する。

特集

  • 定着率8割を維持する秘訣
    ── 教育、職場環境、福利厚生の充実で挑むクレハ環境の人財育成
    編集部

     1971 年、前身の呉羽梱包として誕生したクレハ環境(福島県いわき市)は今年 12 月 1 日に創立 50 周年を迎えた。化学メーカーのクレハグループであることから低濃度PCBなど得意の難処理廃棄物の処理を中心に事業拡大、環境装置のエンジニアリング事業とともに事業が順調に推移している。廃棄物処理事業は本社いわき市と川崎市に焼却施設を構え、2019 年にひめゆり総業を完全子会社化したことから埋立処分事業も行っており、収集運搬事業を含めて廃棄物処理事業を総合的に進めている。そんな同社の事業を支える従業員は現在約 380 人、人財育成に積極的に努めており、ここ 10 年間に入社した従業員のうち 8 割が定着。教育、職場環境、福利厚生と各分野で従業員第一に充実させてきたことが結果となって表れている形で、廃棄物処理事業者としては高い定着率となっている。同社参与管理本部副本部長(兼)人事部長の白旗保光氏から人財の育成のヒントを聞いた。


  • 「人で勝負できる会社」を目指して
    高俊興業株式会社 総務部 担当部長 山口 浩司

     高俊興業では、5 つを柱として事業運営を行っているが、根幹となるのは、『人を創り、人を育て、人で勝負できる会社』である。ただ、当社では、この数年退職者に占める入社 1 年未満者の割合が高くなっており、今年度、特に早期退職者対策を重要課題と定め、各部署で連携・協力して、「新入社員を社員全員で育てる」ことを意識した取組みを始めている。


  • 企業成長を支える人材の育成を目指す
    株式会社ミダックホールディングス 管理部 総務グループ
    五十川 雅美

     2018 年から 3 年の年月をかけて株式会社ミダックホールディングスは、新人事制度の構築を行った。新たな制度として誕生したのは、「人事評価制度」と「教育研修制度」だ。それぞれの制度の内容と、制度構築への想い、ねらいなどについて紹介する。


  • 社員の健康は、重要な経営資源
    ── 組織的に健康な職場づくりを推進
    株式会社アイザック 人事総務企画部 大菅 康夫

     健康経営に関する認定取得等のためではなく、社員がいかに活き活きと輝き働くことができる職場環境整備が大切だ。会社組織と社員個人は一体であり、会社がより生産性を上げるためには組織的に健康な職場づくりを推進していくことが必要。また会社は、社員の健康についても一緒に取り組んでいくというメッセージを社員に発信して伝わるようにしなければならない。社員が共感すれば会社と個人との一体感が醸成され、モチベーションやエンゲージメントが高まり人材の確保と定着に繋がる。


  • 現場レベルで課題解決し、ストレスフリーな職場に
    ── 人間力あるリーダー育成がカギ
    株式会社松田商店 代表取締役 松田 多永

     和歌山市にある資源リサイクルセンター・松田商店。「金属スクラップ業・資源リサイクル業・産業廃棄物処理業」を 3 本柱として事業を展開し、遊園地のアトラクションのような一風変わった工場見学を地元の小学生に向けて発信するなど地域に密着した活動をしている。業界的に人材不足が懸念される当社も例外ではなく、いかに良い人材に出会い定着率を上げていくかを試行錯誤していく中で、考え取り組んできたこと、その結果として得られたことなどを紹介する。


  • 離職改善に向けて
    編集部

     企業が成長していく上で従業員は経営資産とも言える。人材を確保し、育成し、後に続く人たちに継承していくことが重要だ。ただ、せっかく人材を確保し、育てても、離職者は出てくる。従業員が女性の場合などは、出産、子育て、介護など、生活環境の変化によって止むを得ず離職するケースもあるが、これは就業時間に融通を持たせたり、育児休暇など各種休暇制度で対応できる業者も増えている。問題は仕事のきつさや待遇面、人間関係のトラブルなどで離職する人たちだ。こうしたことが原因で従業員が辞めてしまい離職率が高い職場は、人材が定着しにくい環境であることを自覚して策を打たなければならない。ただ、欠員が出たら補充を繰り返して対応するだけでは根本な解決にはつながらない。離職率の改善を図ることが必要で、そのためには人材が定着しない理由を熟考することが第一だ。離職防止対策を施すことで離職率が改善されれば、働きやすい企業だというイメージが定着していく。ここでは離職率の改善について考えてみる。


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