10月号の特集では9月号に引き続き「低炭素から脱炭素!? ②」を取り上げる。AIを活用して走行距離、稼働台数の効率化を図りCO2削減に取り組んでいる事例や焼却に係るCO2の削減や焼却廃熱の再利用についていくつかの事例を紹介。また、太陽光発電と蓄電池を活用して場内電力に活用したり、中間処理の高度化でリサイクル促進と脱炭素を図る事例を取り上げる。そのほか、取り組みを進める業者や設備、運用改善など、経営全体で総合的に脱炭素に取り組んでいる例を解説する。ほかに脱炭素に向けた環境金融政策についても触れる。
特集
一般廃棄物の収集を行う白井運輸と、事業系一般廃棄物、産業廃棄物の収集運搬を行う白井エコセンターで構成する白井グループ(東京都)は、現在AI配車に積極的に取り組んでいる。指揮を執るのは代表取締役社長の白井徹氏だ。収集運搬、中間処理、最終処分と一貫したフローで、スケールメリットを生かしてダイナミックに事業を運営しているアメリカ・ウェイスト・マネジメントのビジネス手法に感化され、特に収集運搬業務のテクノロジーを活用した効率化に着手した。その支援ツールとしてAI配車を導入し、稼働車両を減少させたことで導入前と比較して15%の台数減が図れたという。同社代表取締役の白井徹氏、同営業企画部課長の西沢潤氏、AI配車のシステム構築に関わったイー・トラック(東京都)代表取締役社長の石田明也氏からAI配車のしくみや導入効果などについて聞いた。
埼玉県内の2社の廃棄物処理会社が地球温暖化防止に向けて新たな施設整備を行っている。カーボンフリーの社会要請に応える形で今年6月にメタン発酵施設を稼働させたオリックス資源循環は、同施設で市町村から委託された一般廃棄物を受け入れるため、一般廃棄物処理における脱炭素にも貢献していく。シタラ興産(埼玉県深谷市)は2026年夏に稼働予定の発電付き焼却炉を稼働させるため、現在建設を進めている。処理能力も高くプラスチック資源化における残さの処理も担う施設として注目が集まる施設だ。適正処理と資源化、脱炭素に向けて役割を果たすこの2施設について紹介する。
持続可能な開発目標「SDGs」と同時期の 2015 年に採択されたパリ協定では、最新の気候科学に基づき産業革命以来の地球の気温上昇を、今世紀後半までに2℃よりも十分低く抑え、1.5℃を目指すことに合意している。さらに、長期的に人類の活動から出す排出量と吸収する CO2の量を同量にしてバランスをとること、つまり、今世紀後半までに経済活動や日常生活で排出する実排出量をゼロに近づけることが掲げられている。そのような潮流から早5年が経つ。日本政府も、2020年10月26日に、「 2050年までに温室効果ガスの排出を全体としてゼロにする、すなわち2050年カーボンニュートラル、脱炭素社会の実現を目指す」ことを宣言している。かかる状況の中で企業規模を問わず、組織が「脱炭素」をはじめ気候変動の諸課題について深く向き合っていき、解決に向けた施策を取ることが社会全体から期待されている。本稿では、当社が「脱炭素」に取り組むにあたって、社内で大切にしてきた「価値観」、実際の取り組み、そしてこれからの展望について論じる。
埋立処分場のひっ迫は、日本国内的において深刻な問題であり、新規処分場建設地の用地確保、既設処分場の延命化が課題となっている。富山環境整備においても同様で、その対策として、選別能力を増強した施設を8月から立ち上げ、運転を開始した。廃棄物からの徹底した資源抽出によるリサイクル促進と焼却による減容化で埋立量を削減し、更には2050年カーボンニュートラルの実現に向けた総合的な資源循環を目指す。
来年60周年を迎える大谷清運。現代表取締役の二木玲子氏の父である先代社長の時代に、前職でGHQの塵芥処理を担当したのが縁で事業をスタートさせ、その後、東京23区の清掃事業をメインに事業を展開。産業廃棄物の収集運搬を加えて事業を加速させ、2000年からペットボトル、容器包装プラスチックの資源化を皮切りに中間処理に着手。さらに資源化の枠を広げ、新たな工場を立ち上げ、現在は3つの工場で中間処理事業を展開。第2工場の屋上に念願であった脱炭素に向けて太陽光発電と場内1階に発電した電気を蓄電する蓄電器を整備した。蓄電池付き太陽光発電の導入による電力自家消費の最適化を図っている同社代表取締役社長の二木玲子氏、同専務の羽田裕美子氏、環境事業部統括所長で、今回、脱炭素に向けて太陽光発電を実施しているリサイクルプラント「RE-BONE2010」の責任者でもある小林一則氏から話を聞いた。
2000年に循環型社会推進法が施行されて以降焼却施設でのサーマルリサイクルの促進に注力した三光(鳥取県)は、2002年に稼働させた潮見工場(94t/日、ロータリーキルン+ストーカ)の焼却施設において、蒸気による廃熱利用を進め、小型蒸気発電機を設置した際には業界初の二酸化炭素排出削減事業の国内クレジット認証施設になった。そのほか、回収した熱は隣接する汚泥炭化処理工場の汚泥乾燥時の熱源として利用することで、1.5%だった熱回収率を24.9%に引き上げるなど、二酸化炭素削減に向けて約20年間積極的に取り組んでいる。20年間の取り組みのなかで、さらに同社が注目したのは熱・エネルギーの利用量を増やすことだ。熱回収後の蒸気が保っている温度に着目し、工場が立地する境港市が漁業の町であることから魚の養殖に着手した。焼却廃熱の利用は一般廃棄物焼却施設では、温浴施設や温水プール、産業廃棄物焼却施設では野菜や果物などの農産物などに利用されているが、漁業が盛んな街という立地を生かした魚の養殖はまさに理にかなった取り組みだ。30年来漁業関係の仕事に携わった経験をいかし、2008年に同社に加わった新事業推進室の松本一好さんから話を聞いた。
脱炭素社会構築に向けて大きく変化する社会システムに対して、社内外の人材、技術、ノウハウ、知識といったリソースまで巻き込み、革新的なプロダクトやアイデアを創出するイノベーションを推進する。さらに、2050 年になっても社会インフラを支え、社会に貢献できる「サステナブルプラットフォーム」の構築に邁進し、事業活動を通して、資源循環や地球温暖化対策といった環境分野での社会的課題の解決に取り組んでいく。
「2050年カーボンニュートラル宣言」の実現に向けて、政府は今年に入り、環境金融政策の具体化へ大きく舵を切った。世界全体で 3000兆円超といわれるESG(環境・社会・ガバナンス)投資資金をわが国に呼び込み、「経済と環境の好循環」をつくり出していく狙いだ。脱炭素を求められる廃棄物処理事業者とて、他人事ではない――。本稿では、金融庁が「サステナブルファイナンス有識者会議」で打ち出した政策を俯瞰し、特に主要論点とされた ①企業情報開示の質と量の向上、②「グリーン国際センター」の実現など市場機能の発揮、③金融機関の投資先支援と気候変動リスク管理――等の取り組み等を追った。