『INDUST』2021年8月号 No.406

プラスチック資源循環の夜明け

 プラスチック資源循環促進法が 6 月 4 日、参議院本会議で全会一致により成立した。これによりプラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るまでのあらゆる主体でプラスチックの 3Rと素材代替への取り組みを促進する措置が新たに作られた。基本方針の制定にあたってはプラスチック使用製品廃棄物について、2050 年のカーボンニュートラルと整合したの発生抑制に資すること。さらに、市町村一括回収時に市町村事務に過度な負担がないよう配慮し、地方財政措置などが講じることが挙げられている。また、消費者が理解しやすいような表示制度の検討や、製造事業者等による自主回収・再資源化事業計画などが定められている。また、排出事業者の再資源化事業計画の認定のしくみが適用される廃棄物処理法の特例については、主務大臣が各事業者に対して適切な指導・監督を行うことなども挙げられている。 8 月号では法律の概要を紹介するとともに、プラスチック資源循環に向けたロードマップを示し、プラ製品回収を実施することとなる自治体の取り組みを掲載するほか、自治体を介してプラボトルの回収を業界協働で回収する取り組み、代替え素材として期待されるバイオプラスチックについて紹介する。

特集

  • 全プレイヤーがプラスチックの3R+Renewableに関わる
    ~プラスチック資源循環法への期待~
    ── 環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室
    井関 勇一郎 室長補佐に聞く
    編集部

     プラスチック使用製品の設計から廃棄物処理に至るライフサイクル全般で、あらゆる主体のリデュース、リュース、リサイクル、素材代替の取り組みを包括的に促進するプラスチック資源循環法が 6 月 4 日参院本会議で全会一致により成立した。施行は公布から 1 年以内。現在、政令・省令などの準備が進められている。同法の基本方針には『プラスチック廃棄物の排出の抑制、再資源化に資する環境配慮設計』、『ワンウェイプラスチックの使用の合理化』、『プラスチック廃棄物の分別収集、自主回収、再資源化』等が定められることになっているが、『設計・製造』段階、『販売・提供』段階、『排出・回収・リサイクル』段階のプラスチック関わる各局面で、プラスチックの不必要な使用を減らし、資源循環の輪が広がっていく措置が総合的に進められるようになる。環境省環境再生・資源循環局総務課リサイクル推進室の井関勇一郎室長補佐に同法の目的などを聞いた。


  • プラスチック問題の包括的解決に向けて
    早稲田大学法学学術院教授 大塚 直

     海洋でのプラスチック(以下、「プラスチック」については「プラ」という)による汚染は、海岸での漂着ごみ(個数の 7 割程度をプラが占める)、及び海洋で漂流するマイクロプラの問題であり、これにより、生態系を含めた海洋環境への影響、船舶航行・観光・漁業、沿岸域居住環境への影響が生じている。既に海洋のプラが魚に摂取され、それを通じて人間に摂取されていることが明らかになっている。プラが有害物質を吸着する性質を有することから、人の健康被害の可能性も懸念されているが、現在、この点はまだ明らかにはなっていない。海洋でのプラ汚染は地球規模で生じており、世界経済フォーラムの報告書(2016 年)によると、2050 年までに海洋中のプラの量が魚の量を上回ると予測されている。このような海洋プラ汚染問題、気候変動問題、中国等の廃プラ等の輸入規制強化等への対策の必要を契機として、プラ資源循環に関する対応がわが国の重要な環境政策として立ち上がってきた。海洋プラ汚染問題に関しては、日本近海はプラ汚染の有数のホットスポットである。


  • プラスチック資源循環、戦略策定から循環促進法制定へ
    プラスチック資源循環戦略小委員会委員長
    京都大学名誉教授
    酒井 伸一

     プラスチック素材の使用が海洋のマイクロプラスチック汚染に繋がらないように、また温室効果ガス排出に繋がらないように、そして化石資源の保全と有効な利活用に繋がるように生産と消費を含めた社会全体の取り扱いが見直されつつある。3Rプラス原則、プラスチック資源循環戦略からの政策展開の経緯と概要、温室効果ガス排出との関係について論じ、とくにプラスチック資源循環促進法における自主回収や製品設計に関する制度展開には期待したい。


  • プラスチック代替品の開発と普及に向けて
    ── 日本バイオプラスチック協会に現状と展望を聞く
    編集部

     プラスチック資源循環促進法では従来のプラスチック製品の代替えとなる素材としてバイオプラスチックに注目が集まっている。バイオプラスチックは生分解性プラスチックと有機性資源を原料としたバイオマスプラスチックのことを指し、これまでも注目される機会があったものの、大きな市場は形成されていない。バイオマスプラスチック導入ロードマップでは 2030 年までに 200 万tの導入が目標とされており、今後の動向が気になるところだ。ここではバイオプラスチックの普及のために活動している日本バイオプラスチック協会事務局長の横尾真介氏からバイオプラスチックの普及状況などを聞いた。


  • 日用品パッケージの業界内循環に向けて
    ── ユニリーバ・ジャパンが同業者、自治体と協業で取り組むボトルtoボトル
    編集部

     プラスチックの再生しやすい商品の開発も注目される。とくに容器としてプラスチックを扱う業界は大きな転換期にきている。ここでは、シャンプーやボディウォッシュなどを提供しているユニリーバ・ジャパンの取り組みを紹介する。同社は同業の花王と連携し、東京都東大和市から回収されたボトル容器をはじめとしたプラスチック製のパッケージのリサイクルの実証を始めた。日用品容器のボトルtoボトルを標榜し、業界内での容器の循環を目指す同社。東大和市で取り組んでいる「みんなでボトルリサイクルプロジェクト」の担当者、プロキュアメントリーダーの増田有紀氏と広報担当の新名(しんみょう)司氏から同社が取り組んでいるプラスチックの資源化の取り組みについて聞いた。


  • 民間事業者と協働でペットボトル回収順調
    ── その他プラ容器の資源化も積極的に展開する東大和市
    編集部

     家庭ごみから排出されるペットボトル容器について、市町村と流通企業、飲料メーカーなどが協働で取り組む事例が出てきている。一方で、プラスチック資源循環法では、製造事業者等が自主回収や再資源化事業計画を進めることが求められており、今後も市町村と民間事業者が協働でペットボトルの回収、資源化を促進する動きが増えるかもしれない。ここでは、先進的に民間事業者と協働している東京都東大和市の事例を紹介する。


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