『INDUST』2020年9月号 No.395

安全衛生管理に全力―第2次労働災害防止計画への取り組み―

 公益社団法人全国産業資源循環連合会が2017年度から3カ年にわたり取り組んできた第1次労働災害防止計画が19年度で最終年度を迎えた。同計画では、「計画期間中の労働災害による死亡者数及び死傷者数を12~14年実績の平均より全都道府県で20%以上減少させる」ことを目標に掲げ、各協会の協力で各種労働災害防止活動を実施。その結果、協会とその会員企業に安全衛生への取り組みの重要性が認識されつつあるが、目標は達成することはできなかった。この状況を踏まえ、同連合会では、目標達成に向けて全力で取り組むために第2次労働災害防止計画を策定した。9月号では同連合会の第2次労働災害防止計画の概要とともに、労働安全衛生に向けた行政の取り組み、労働災害の傾向、安全衛生については、未熟練労働者への教育の在り方や、産廃処理業者の事例などを紹介。さらに同連合会が募集した安全衛生規程標語の受賞者へのインタビューも紹介する。

特集

  • 産業廃棄物処理業における第2次労働災害防止計画の概要について
    公益社団法人全国産業資源循環連合会安全衛生委員会
    委員長 篠原 隆博

     公益社団法人全国産業資源循環連合会(以下、「連合会」という。)では、平成29年度から3カ年にわたり「産業廃棄物処理業における労働災害防止計画(以下、「第1次労働災害防止計画」という。)」に取り組んだ。第1次労働災害防止計画では、当業界における労働災害の削減に向けた具体的な数値目標(以下、「目標」という。)を定め、連合会の正会員である各都道府県協会(以下、「協会」という。)の協力のもとその実現に向けて取り組みを進めた。第1次労働災害防止計画では、休業4日以上の死傷者数を2012~14年の平均から20%以上減少させる等の目標を設定した。第1次労働災害防止計画の取り組みにより当業界において安全衛生活動の重要性は認識されつつあるが、残念ながらその目標を達成することはできず、当業界における労働災害発生率は、依然として他産業に比べて著しく高い状況が続いている。
     このような状況を踏まえ、連合会では、労働災害の削減に向けた取り組みを継続的に行うことが不可欠であると判断し、令和2年度を初年度として「産業廃棄物処理業における第2次労働災害防止計画(以下、「第2次労働災害防止計画」という。)」に取り組むこととした。


  • ツールを使用した安全衛生規程の作成
    公益社団法人全国産業資源循環連合会

     全国産業資源循環連合会(以下、「連合会」)では、産業廃棄物処理業の安全衛生活動の取り組みを後押しするための各種支援ツール(図1)を連合会のホームページ(https://www.zensanpairen.or.jp/disposal/safety/)上で公開している。
     ここでは、従業員数、処理内容等を選択することで事業場に合った安全衛生規程を簡単に作成できる「安全衛生規程作成支援ツール」の使い方を以下のとおり説明する。ぜひ活用いただきたい。


  • 全産業で死傷者が微増
    ―改めて、労働安全衛生について考える―
    厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課に聞く
    杉山 忠義

     労働災害の発生が増えているのは、産廃業界だけではない。全産業において、死亡者数は減少の傾向にあるが、休業4日以上の死傷者数は増えている。なぜ、死傷者は増えているのか。どのような策を講じれば、再び減少に転じるのか。労働安全衛生管理の根幹ともいえる、労働安全衛生法をはじめとする各種政策や施策を規定・実施している、厚生労働省労働基準局安全衛生部安全課に聞いた。


  • 千葉県における労働災害の傾向
    千葉労働局労働基準部健康安全課

     千葉県内における労働災害による休業4日以上の死傷者数(図1参照)は、1973年の8877人をピークとしてその後減少を続け、99年以降は5000人前後で横ばい状態が続く中、11年に労働安全衛生法施行(72年)以降最少となり、16年に増加に転じ、年間5000人を超える状況が続き、2019年は99年以降で最多の5705人(前年比170人(3.1%)の増加)となった。本稿では業種、起因、型など、事故を項目別に区分し、図を用いて県内の事故の傾向を示す。


  • 産業廃棄物処理業における未熟練労働者への安全衛生教育のあり方
    未熟練労働者の安全衛生教育マニュアル―産業廃棄物処理業編―の利用を通じて
    中央労働災害防止協会 技術支援部次長
    平川 秀樹

     作業に慣れておらず、危険に対する感受性も高くない労働者は、熟練労働者よりも労働災害に遭う可能性が高い状況にある。そうした未熟練労働者の労働災害を防ぐためには、雇入れ時や作業内容変更時等の安全衛生教育をしっかりと行うことが重要となる。そこで、2019年に作成した「未熟練労働者の安全衛生教育マニュアル-産業廃棄物処理業編-」あらためてひもとき、その効果的な活用について各事業場で再確認していただけるよう、ポイントをまとめた。安全意識の高揚、労働災害のない職場作りにつながる教育の実践に役立てていただければ幸いである。


  • 労働災害防止に向けた我が社の取り組み
    株式会社市原ニューエナジー 事業推進部
    齋藤 雅博

     廃棄物処理には多くのリスクが存在し事故も多い。一方、廃棄物は多岐にわたり処理方法も多様化している。また、設備は自動化や省人力化が進み、一層複雑になっている。自然災害等に対する対策の強化も求められ、あり合わせの安全対策では安全を確保することが難しくなっている。
     当社、市原ニューエナジーでは、一定の安全手順を満たしたうえで、PDCA等により改善し、その設備や運用に見合った対策を講じてきた。このような取り組みと実績が評価され、「令和元年度安全優良職長厚生労働大臣顕彰」を受賞することができた。本稿では、当社の取り組み等を紹介する。


  • 情報共有、意見抽出、議論で労働災害防止
    株式会社こっこー 呉リサイクルセンター
    呉管理グループ 宮本 智行

     我が社では資源循環事業部、生活環境事業部、製鉄事業部の3事業部制をとっており、様々な事業展開をしている。その中でも、スクラップの仕入、加工、販売がメインの呉リサイクルセンターでは様々な設備を設置しているため、設備の操作時やスクラップの荷下ろし時、保管時など様々な危険性が存在している。入荷前の営業と現場管理者、現場責任者の事前打ち合わせや安全パトロール、安全会議の実施により、日々全スタッフが危険場所や危険行動の予防、対策を考えることで、労働災害の防止に努めている。


  • 公益社団法人全国産業資源循環連合会安全衛生規程標語受賞者に聞く
    「安全第一」の意識から生まれた素直な言葉を標語に
    ☆安全衛生委員長賞受賞「作って認識、守って安心、安全衛生規程」
    受賞者:大幸グループ・大阪ベントナイト事業協同組合(大阪府) 今村政和さん

     「安全衛生委員長賞」に輝いた今村政和さんは、解体現場から発生する建設汚泥や、薬品等の製造工場から出る廃酸・廃アルカリなどの収集運搬を請け負う大幸工業の処理部門「大阪ベントナイト事業協同組合」の南港処理センターで、特別管理産業廃棄物をはじめとする廃酸・廃アルカリの中和・脱水、無害化などに携わっている。受賞作「作って認識、守って安心、安全衛生規程」は、日頃の業務の中で常に念頭に置いている「安全第一」の意識から生まれたごく自然な言葉だったという。(編集部)


  • 公益社団法人全国産業資源循環連合会安全衛生規程標語受賞者に聞く
    伝わりやすさを重点に
    ☆優秀賞「安全衛生規程、作って実行、目指せゼロ災害」
    受賞者:ダイセキ(愛知県)関東事業所 大庭康弘さん

     日頃から社員に安全衛生の意識を高く持たせているダイセキ。今回優秀賞を受賞した入社6年目の大庭康弘さんは、同社関東事業所生産部生産技術課の技師として、入社以来、分析業務に当たっている。「上司から全国産業資源循環連合会で安全衛生規程標語を募集していることを聞いて応募しました」と控えめに応募動機を話すが、誰が読んでも理解しやすい内容にするなど、工夫を凝らしたようだ。(編集部)


  • 公益社団法人全国産業資源循環連合会安全衛生規程標語受賞者に聞く
    「安全衛生向上」は対面でなく横並びの精神で
    ☆優秀賞「言葉にしよう!伝えよう!作って守る、安全衛生規程」
    受賞者:大都クリーン株式会社(大阪府)総務・経理部長 木村隆文さん

     産業廃棄物と一般廃棄物の運搬を主な業務とする大都クリーンの総務・経理部長を務める木村隆文さんは、安全衛生への意識を高めてもらうためには「仕事(=会社)を大切に思う気持ち」が一番重要だとして、従業員が気持ちよく働ける環境づくりに力を注いでいる。また業界の安全衛生向上のためには、事故事例を自分ごとと捉え、みんなが仲間意識をもって共有していく姿勢が必要なのではと提案する。(編集部)

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