災害廃棄物への対応は年々増え、そのたびに廃棄物処理業者は経験を重ねて次の災害時に生かしているが、今後の災害廃棄物処理に備えて自社が関わらなかった災害対応の知見を共有することも重要になってくる。また、記録的な大雨による洪水被害を東日本各地にもたらした令和元年東日本台風では複数の一般廃棄物処理施設が停止するなど、一般廃棄物の処理にも支障をきたす事例も出ており、水域に近い施設や低地にある施設を保有する事業者は施設の浸水対策や車両の浸水防止対策も考えなければならない。6,8月号では災害廃棄物処理に関する対策と教訓や最近発生した災害ごとに環境省や産廃事業者の対応を紹介するほか、プラントメーカーなどに施設の耐震対策、浸水対策について解説してもらう。
特集
令和元年は10月に発生した令和元年東日本台風等、全国各地で数多くの自然災害が発生した。大規模な災害が発生すると膨大な量の災害廃棄物が発生し、処理主体となる市区町村では平時からの備えが必要となることから、災害廃棄物が発生した際の検討事項を整理した災害廃棄物処理計画の策定が必要となる。環境省では、モデル事業や図上演習の実施を通じて、計画未策定の市区町村の策定支援や計画策定済みの市区町村のフォローアップを行っている。
令和元年台風第19号では、中部地方環境事務所管内の長野県が大規模な水害に見舞われた。中部地方環境事務所は、長野県庁内に現地支援チームを設置するとともに、「災害廃棄物中部ブロック広域連携計画」策定後、初めて同計画に基づき広域支援を行った。本稿では、長野県における環境省をはじめとする国の機関、自治体、事業者、ボランティア等の災害廃棄物処理支援の取組内容を報告する。
2019年の令和元年台風15号、19号、さらに、同年10月25日の大雨により千葉県では災害廃棄物が大量に発生した。とくに台風15号では大きな被害を受け、災害廃棄物処理には一般社団法人千葉県産業資源循環協会の会員企業が運搬、処理に貢献し、経験の少ない仮置き場の管理も行った。契約にかかる作業や一廃処理施設との連携など、いくつかの課題がでてきたという同協会専務理事の木村秀雄氏と同事務局長の石野利明氏から話を聞いた。
2019年の台風や大雨の被害は一般廃棄物の焼却施設にも大きな影響を与えた。千葉県東金市、大網白里市、九十九里町、山武市(旧成東町のみ)の自治体で構成する東金市外三市町清掃組合の環境クリーンセンターは令和元年台風15号で4日間、焼却炉全炉を停止。全炉停止時にごみピットの許容量もほぼなかったため、ごみ収集も4日間停止せざるを得なくなった。停止に至った理由は浸水などではなく、停電と断水だった。災害時は災害廃棄物の処理を進めると共に生活ごみを従来通りに処理しなければならないが、万が一施設を停止するにしても、早急に事業を復旧させる必要がある。同組合の事務局長の二井孝治氏と業務係長の堤俊夫氏に当時の状況と復旧までの行程を聞いた。
大阪ベントナイト事業協同組合(浜野廣美代表理事)南港処理センターは、建設汚泥などの汚泥、廃酸、廃アルカリの中間処理施設である。大阪市の技術指導をいただいて1977年に竣工し、約50年間、継続稼働している。災害廃棄物処理に関する経験・実績は、次の災害時に生きかされていく。このため、将来に備え、自らが関わらなかった災害対応についても、知見を共有することが重要となる。本稿では「災害時の教訓をもとにした事業継続計画概要と、その先にあるもの」を紹介する。
廃棄物の中間処理施設は災害時においても施設を早期に再稼働し、廃棄物の安定処理を継続することが求められるため、施設の強靭化、災害時の円滑な災害廃棄物処理に向けたハード・ソフト両面でのアプローチが必要となる。さらに最近では、廃棄物処理施設の強靭性およびごみ焼却発電を活かし、地域の「防災拠点」としての役割が期待されるなど、地域へ新たな価値を創出し、地域に貢献する取り組みが行われている。そこで本稿では中間処理施設の耐震、浸水対策、さらには防災拠点機能について、一般廃棄物処理施設での事例(今治市クリーンセンター、宮ノ陣クリーンセンター)を交えて紹介する。