環境省は、2022年9月に『循環経済工程表2050年の循環型社会に向けて』を公表した。資源循環と脱炭素の同時達成を目標として、素材や製品別など各分野における施策の方向性などを示しており、資源循環業界も循環経済の取り組みを強化していかなければならない。3月号では同工程表の全体像と、推進するためのポイントを解説するとともに、循環経済に向けて積極的に取り組んでいる企業の事例を紹介する。
特集
環境省は2022年9月に循環経済工程表を策定した。2050年カーボンニュートラルを見据えた目指すべき循環経済のあり方を示しつつ、2030年までの施策の方向性を示したものであり、そのカバー領域は、プラスチックや金属などの素材から、製品、適正処理、国際連携など、多種多様である。本稿では、工程表の策定の背景や、ポイントを解説する※)。
※本稿の意見・評価にわたる部分は筆者の個人的見解である。
1990年代後半から、現在に至る環境・持続可能性分野の国内外の変化は目まぐるしい。特に資源循環分野は、各種リサイクル法や関係者の努力により実績を上げてきたと同時に、2050年炭素中立社会の実現に向けて、4割近くを占める重要な分野である。中でも、注目しているのは、プラスチックやバイオマス資源、金属類などである。いずれも裾野が広いので、多くの方に、循環型社会に向けた転換のキープレイヤーになっていただききたい。
J&T環境は、JFEエンジニアリングと東京電力の子会社が合併してできた会社であり、焼却発電事業および食品廃棄物やプラスチックのリサイクルなどを展開している。循環型社会の実現に向けて、ペットボトルの水平リサイクルや地産地消リサイクルなどに取組んでおり、「ミラクルリサイクル」を追求している。
さまざまな産業から排出される多種多様な廃棄物を、独自のミキシング技術により再資源化し、再生燃料RF(石炭代替燃料)としてセメント工場に販売。RFの製造工程では、幅広い受け入れと安定した技術、そして混練によるリサイクルのため排ガス・排水ゼロ。また脱炭素経営を目指し、2020年9月にSBT認定をグループで認証取得。RF製造によって、石炭の使用量削減や脱炭素化、さらに持続可能な循環型社会実現のためのインフラ構築に貢献する。
高度経済成長期に整備された社会資本が老朽化し、更新に伴う建設廃棄物の増加が懸念されている。一方で、建設混合廃棄物における全国のリサイクル率は約63%であり、真の循環型社会を形成していくためには、リサイクルにおける「質」の向上が求められている。
建設混合廃棄物の選別に特化している当社は、リサイクル率90%を目標に、高精度選別再資源化システムの開発に取り組み、現在はリサイクル率96%を目標に、処理システムの向上を目指している。さらなるリサイクル率の向上にあたっては、生産者からリサイクル先までの連携、可燃物のリサイクル技術の向上、人と重機による選別作業のさらなる改善が必要である。
新型コロナによる経済の低迷、バーゼル法改正による資源輸出ルールの変更、中国の輸入規制強化、カーボンニュートラルを実現するための再生資源の活用、サーキュラーエコノミーの進化など、大波が押し寄せている。再生資源の半鎖国時代がきたのだ。当社は明治35年の創業から昨年120周年を迎えたが、かつてないリサイクル技術、設備への要求が高まっている。
世界的に電気自動車(EV)、外部給電機能対ハイブリッドカー(PHEV)へのシフトチェンジが加速している。欧州を中心とした世界各国が、2030年までに化石燃料を使用した自動車の販売を禁止していく中で、世界有数の自動車メーカーがそれらの政策に合わせた自動車を販売していく動きである。トヨタ自動車株式会社は、 2030年までにEVやハイブリッド(HV)用の電池開発に1.5兆円を投資することを発表した。その一方、リチウムイオン二次電池(以下、LIB)が原因の火災を、頻繁にニュースで目にするようになった。LIBは便利である一方、取り扱い方や廃棄の仕方を間違えると大変危険な物となる。VOLTAは、2018年1月の設立から5年近くが経過しており、工場稼働前もLIBを集荷していたが、保管中、運搬中の発火事故は一度も起きていない。しっかりとした保管方法を行えば、保管中の発火事故は防げると認識している。本文内でLIBの安全な保管方法が伝われば幸いである。
イオンは、「店舗・商品」、「お客さまとのコミュニケーション」、「地域とともに」の 3つの視点で、資源循環型社会の実現を目指して取り組んでいる。食品についても、「イオン食品廃棄物削減目標」を策定し、商品の表示や包装での対応を進めるほか、店舗の食物残さを堆肥化して自社農場で使用し、育てた農産物を店舗で販売する「リサイクルループ」の構築を通じた食品資源循環にも取り組んでいる。
凸版印刷は協業先とともに使用済み紙おむつの全てをリサイクルする「完結型マテリアルリサイクル」の開発を進めている。同システムは、使用済み紙おむつを分別回収、水溶化処理を行い、パルプ・プラスチック・SAPとして再資源化をするものである。目標は「完結型マテリアルリサイクル」を日本発の技術として、世界に発信してゆくこと。各方法の事例・実証例・成果およびその効果を紹介する。