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いんだすと いんだすと2017年8月号 No.358

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奈良県田原本町清掃工場設置環境整備事業補助金住民訴訟事件
岩手県立大学研究・地域連携室特任准教授 千葉 実
 周辺住民の反対を克復して設置された一般廃棄物処理施設について、町が自治会に地域環境整備事業助成金を支出すること等で同意を得て協定で定められた期間を延長して稼働を継続していたところ、当該支出は違法として、その支出を命じた当時の町長に支出相当額の損害賠償請求を求める住民訴訟が提起された。大阪高裁は、当該補助金の支出に裁量権行使の逸脱や濫用は認められず違法性はないとして控訴を棄却した。
日の出町一廃最終処分場事業認定処分取消請求事件
横浜国立大学大学院国際社会科学研究院准教授 板垣 勝彦
 多摩地域の市町により組織される一部事務組合が一般廃棄物最終処分場を設置するためになされた事業認定・収用裁決に対して、事業地の所有者らから取消訴訟が提起された。裁判所は、当該土地がその事業の用に供されることによって得られる公共の利益が失われる利益に優越するとした都知事の判断に裁量権の逸脱・濫用はなく、都収用委員会の収用裁決にも瑕疵はないとして、請求を棄却した。
川崎町一廃処理業府許可取消請求事件
山梨学院大学大学院法務研究科教授 三好 規正
 浄化槽の保守点検及び清掃業を営む原告が、浄化槽汚泥の収集運搬業の許可申請を行ったところ、町長から不許可処分を受けたため、処分取消訴訟を提起した。判決は、町長が、申請について一般廃棄物処理計画との適合性を審査していなかったこと、同計画を告示その他の方法により公表していなかったこと、不許可処分通知書の理由提示が行政手続法上不十分であることを理由として、不許可処分を違法と判断し、原告の請求を認容した。
岡山市管理型産廃最終処分場設置許可取消請求事件
福島大学行政政策学類准教授 清水 晶紀
 本件は、産廃処理施設の設置許可を施設周辺住民が取消訴訟で争ったものであり、本判決は、原告らが生活環境影響調査の対象地域内に居住していることを主たる理由に、原告ら全員の原告適格を認めた。なお、本判決は、許可要件を充足していることを理由に産廃処理施設設置許可の違法性を否定しているが、学説の中には、効果裁量を認めるという形で、許可要件を充足してもなお許可を拒否できる可能性を指摘するものもある。
川崎市土壌汚染対策費用賠償請求等事件
上智大学法学部教授 桑原 勇進
 川崎市がその廃棄物焼却灰等を、土地の埋立に用いようとする業者の依頼により、埋立対象土地に搬入し、当該焼却灰等により土壌が汚染された。当該土地を後に購入し所有者となった者が、汚染除去等の措置をとった後、市に対し、汚染除去等の措置に係る費用相当額等を、損害賠償ないし土壌汚染対策8条1項に基づく求償として請求した。判決は、市は焼却灰等を譲渡・搬入したのみで自ら埋立等をしたわけではなく、汚染原因者ではないとし、請求を棄却した。
小浜市一廃処理業許可取消等請求事件
上智大学法学研究科博士課程 釼持 麻衣
 一般廃棄物処理業は、住民の生活に必要不可欠な公共性の高い事業であり、需給状況の調整を通じて、既存業者の営業上の利益を保護することが、「生活環境の保全及び公衆衛生の向上」という廃棄物処理法の目的を実現する上で基礎となる。したがって、市町村長から一定の区域につき既に一般廃棄物処理業の許可等を受けている者は、当該区域を対象として他の者に対してされた同業の許可処分等の取消しを求めるにつき、原告適格を有する。
葛城市クリーンセンター建設許可差止請求控訴事件
熊本大学法科大学院准教授 原島 良成
 一般廃棄物処理施設の設置計画に対し、予定地周辺住民が、自然の風致景観が損なわれると主張して許可差止訴訟を提起した事案である。本判決は、景観利益が視覚的なものに限定されず「自然環境に起因する音、香り、清浄な空気等」も含むことを前提に、「施設の稼働によって、騒音、悪臭、ふんじん等の被害を受けるおそれ」がある住民に原告適格を認めた(許可により重大な損害を生ずるおそれがないとして差止請求自体は却下)。
東海村産廃焼却施設設置許可処分取消請求事件
上智大学大学院法学研究科教授 越智 敏裕
 周辺住民等が茨城県知事による産廃焼却施設等の設置許可処分の取消を求めた訴訟で、裁判所は、生活環境影響調査の対象地域内である、当該処理施設から4km の範囲内に居住する控訴人(原告)らの原告適格を認めた上で、請求をいずれも棄却した。なお、一部の主張が自己の法律上の利益に関係のない違法にあたるとして行政事件訴訟法10 条1項に基づき主張制限をした。
環境省災害廃棄物広域処理検討関連文書一部不開示決定取消・開示決定義務づけ請求事件
千葉大学大学院社会科学研究院准教授 横田 明美
 環境省が地方公共団体の廃棄物主管部局宛てに行った、東日本大震災で生じた災害廃棄物の広域処理についての受入検討状況調査は世間の注目を集めた。受入れについては多数の反対意見や脅迫まで行われていた。市民団体に所属する原告が情報公開請求をしたところ、具体的な場所がわかる部分を不開示とする一部不開示決定がなされたため、その取消しと全部開示決定の義務付けが求められた。裁判所は、「不当に国民の間に混乱を生じさせるおそれ」等はないとして、請求を全て認容した。
徳島県公害紛争調停国家賠償請求事件
西南学院大学法学部教授 勢一 智子
 産業廃棄物最終処分場に廃棄物等を持ち込んだ事業者等に対して周辺住民らが公害紛争処理法に基づく調停を申請したところ、調停委員会は当事者間で合意が成立する見込みがないとして、第1回調停期日において調停を打ち切った。これに対して、国家賠償法1条1項に基づき、損害賠償請求訴訟が提起された。最高裁は、同委員会の広範な裁量に照らして総合的に判断した結果、裁量権の範囲を逸脱したものとはいえないとして、請求を棄却した。
交野市一廃処理業地位保全仮処分命令申立事件
上智大学大学院法学研究科博士後期課程 若生 直志
 Xは、長年にわたって交野市(以下、Y)と随意契約の方法による委託契約を締結して事業系一般廃棄物の収集運搬を行っていた。しかし、平成26 年、Yは直営方式による収集に切り替えるとして、Xとの委託契約を打ち切った。そこで、Xは、事業系一般廃棄物収集運搬の委託契約上の権利を有する地位にあること等を仮に定める仮処分命令を求めた。本決定は、委託契約は契約期間満了により正当に終了しているとして、Xの申立てを却下した。
大阪市災害廃棄物広域処理差止等請求事件
上智大学大学院法学研究科博士後期課程 箕輪 さくら
 東日本大震災により岩手県内で発生した災害廃棄物の一部は、大阪市内で焼却・埋立て処理された。原告らは、この処理過程で放射性物質が環境中に放出され、身体・生命に害悪が及び、又は害悪が及ぶ蓋然性が生じ、人格権・環境権を侵害されたとして、大阪府及び大阪市に対して民法709 条に基づく損害賠償を請求した。裁判所は、原告らの生命・身体に害悪が及び、又は害悪が及ぶ蓋然性が生じたということができず、害悪が及ぶ具体的危険性があったともいえない以上、本件事業により原告らの権利・利益が侵害されたとはいえないとして請求を棄却した。
紀伊長島町水道水源保護条例国家賠償請求事件(控訴審)
弁護士 藤原 周作
 原告が産廃処理施設の設置を計画していたところ、町の水道水源保護条例に基づく規制対象事業場の認定処分を受けたため、計画通りの立地が困難となった。そのため原告が認定処分の取消訴訟を提起したところ、処分は町長の事業者に対する配慮義務違反により違法であるとして取り消された。そこで原告は、違法な処分により損害を受けたとして、町に対し国家賠償訴訟を提起した。本判決は、町長による配慮義務違反は職務上尽くすべき注意義務を尽くさないものとして国家賠償法上も違法であるとして、請求を一部認容した。
市産廃処理運搬業無許可営業被告事件
弁護士・熊本大学法科大学院非常勤講師 赤瀬 康明
 石材業者を中心に廃棄物として扱わない習慣がある廃墓石について、本判決は、産業廃棄物に該当すると判断した上で、業務開始後数年間行政から何の指導も受けてなかった場合においても、行政から指摘指導を受けた後の無許可収集運搬行為については、少なくとも未必的故意があるとして産業廃棄物無許可収集・運搬罪の成立を肯定した。
東海村焼却炉差止訴訟
専修大学法学部准教授 須加 憲子
 廃棄物処理業者が、東海村に産業廃棄物中間処理施設の設置を計画し、県知事から廃掃法の規定に基づく設置許可を受けた。これに対し、施設の周辺住民から、ダイオキシン類等の有害物質が排出され、生命・身体・平穏な生活等を侵害する蓋然性が高いとして建設・操業の差止を求めた。裁判所は、立証責任の転換は行ったが、廃掃法の技術基準への適合性及び経理的基礎の充足等から、受忍限度を超える侵害はないとして、請求を棄却した。